彫刻家・新谷英子氏作の太閤秀吉像とねね像

有馬川を挟んで見つめ合う太閤秀吉像とねね像。慶長伏見地震（1596年）によって大きな被害を受けた有馬温泉の復興に尽力するなど、この地に深い縁があることから二人の像が制作されました。太閤秀吉像が設置されたのは昭和57年のこと。ねね像は平成9年に設置されました。作者はともに彫刻家・新谷英子氏（昭和17年〜平成29年）です。英子氏の作品は神戸三宮の「さんちか」をはじめ兵庫県内を中心に全国各地に設置されており、当館中庭にも「子供と水鳥」という作品がございます。今回は英子氏が作品を製作される際にお手伝いをされるなど交流の深かった那須さんと小林さんに太閤秀吉像とねね像にまつわるエピソードをお伺いしました。

彫刻家エミリオ・グレコ氏から「エイコのハトは大空いっぱいに幸せそうに飛んでいる」と評された「鳥シリーズ」をはじめ、たくさんの作品を残してこられた英子氏ですが着物の作品は数点のみ。秀吉像とねね像はめずらしい作品に数えられますが、凜と背筋が伸びた秀吉とねねの姿に他の作品にも通じる先生らしさが表現されているとお二人は語ります。また、この作品で特に象徴的なのは二人の目線。よく観察するとうっすらと目が合うように設計されており、制作にあたっては何度も有馬へ足を運びイメージを固められたそうです。英子氏は生前、野外彫刻清掃のボランティア活動にも参加するなど、作品のメンテナンスにも尽力されたと言います。その美しい佇まいを鑑賞できるのは、英子氏をはじめとする作品を愛する人たちの熱心な活動があるからこそ。年を重ねることで緑青を帯び、趣が増した秀吉像とねね像。作品の背景に想いを馳せながら鑑賞いただくと、また違った景色をお愉しみいただけます。