山陰の松葉ガニ

この季節を代表する高級食材「ズワイガニ」。鳥取や兵庫県西部では松葉ガニと呼ばれ、それ以東では津居山がにや間人がになど漁港の名を冠したブランドガニが有名です。このズワイガニは水温が0〜3℃の低温で水深200～400ｍの砂泥域の海底に生息しており、国内有数の漁場として知られる山陰から北陸の沖合の海底も、この性質を持っています。この地域にカニが好む冷水域が形成されるのは、シベリアの寒気団によって冷やされた日本海北部の水塊が、日本列島があるおかげで太平洋に流出せずに日本海の深部に留まるからです。
世界に目を向けると他にもカニが生息する地域はたくさんあります。その中でも、この地域で水揚げされたものが別格なのは生息域が漁港から近い場所にあることも大きな要因のひとつです。カニの味は鮮度に大きく左右されるため、水揚げまでのロスが少ないこの地のものが美味いわけです。また、日本人は世界一のカニ好きとも言われ、カニ食文化が深く根付いていたからこそ、今日のような冷凍技術の発展に繋がりました。つまり、この季節に美味いズワイガニをいただけるのは、類い稀な地形と豊かなカニ食文化が揃うこの地域ならではの特権であるということです。